
こんにちは。 押切もえです。
ワインアンバサダーになって、早いものでもう1年が経ちました!
アンバサダー通信も第12回を迎え、今後ますます内容を充実させて、一人でも多くの方にワインのおいしさ、楽しさをお伝えしていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
さて、今回は日本のワインのお話です。
日本でワインが造られはじめて130年ちょっと。 初めは本格ワイン*にアルコールや糖類・香料を加えた「甘味ブドウ酒」が主流でしたが、40年ほど前から本格ワインへと移り変わり、洗練された味わいに変遷を遂げたことが転機になって、甲州、マスカット・ベリーAといった日本固有品種の個性も磨かれていきました。(*本格ワイン:アルコール香料などを混ぜずに造られたワイン)
そして、日本という土地の持つ独特の気候、風土(テロワール)によって育まれるブドウの個性を素直に表現した結果、世界が認めるワイン産地として注目を集めるようになったといいます。
その特徴を一言でいえば「フィネス&エレガンス(調和のとれた上品な味わい)」。 実はいま、世界のワインの流れも「フィネス&エレガンス」に向かっているそうです。
今回は、そんな日本のワインを大特集! 日本の風土がつくりだす味わい豊かなワインをたっぷりご紹介します!

今日は、日本のワインをテーマにお話したいと思います。
日本がワイン造りに目覚めたのは、文明開化がはじまった明治初期。 明治10年(1877年)にメルシャンの源流の一つといえる「大日本山梨葡萄酒会社」が創立しましたので、約130年の歴史ということになりますね。
日本のワインの歴史=メルシャンの歴史といえるんですね。 すごい!
とはいえ、米穀中心の日本の食生活に本格ワインの味わいはなじまず、長い間、日本のワインは「スイートワイン」と呼ばれた甘味ブドウ酒が主流の時代が続きました。 それが、食生活の洋風化、東京オリンピック、大阪万博をきっかけに、1970年代半ば、本格ワインと甘味ブドウ酒の消費量が逆転したころから流れが変わってきたんです。
そして、日本固有品種である甲州から造られる本格ワインも洗練されたフレッシュ&フルーティな味わいを目指すようになり、努力の甲斐あって、昔の甲州ワインとはまったく違う、華やかな香りを持つやや甘口のワインが造られるようになったんです。 1970年半ばに造られた『勝沼ブラン・ド・ブラン*』は、このタイプの味わいを持つワインで、隠れたロングセラーとしていまもファンが多いワインなんですよ。 あとでテイスティングしてみましょう。(*現『甲州ブラン・ド・ブラン』)
わーい! ぜひ飲んでみたいです。
その一方で、食事に合わせるワインとして辛口タイプの甲州ワインも造られるようになりました。 しかし、辛口に仕上げると、今度は味わいに厚みがなくなり、「香り・味わいに乏しい凡庸なワイン」と評されて、また壁にぶつかってしまったんです。
そこで採用したのが、フランス・ロワール地方のミュスカデというワインに用いられる独特な製法「シュール・リー」です。
シュール・リー=「澱(おり)の上」ですね。 発酵後に出てくる沈殿物(澱)を分離せずに一定期間一緒に寝かせることで、澱に含まれるうまみ成分が溶け出して、ワインの味わいに厚みや幅を与えてくれるんですよね。
そう、よくできました(笑)。
シュール・リー製法の甲州ワインを日本で初めてリリースしたのが1984年。 以降、シュール・リー製法は、のちほどテイスティングする『勝沼甲州』など、辛口甲州ワインのスタンダードになりました。 勝沼で甲州ワインを生産する他ワイナリーにも製法の情報を公開したんですね。
それがメルシャンのすごいところですね。 メルシャンだけが一人勝ちするんじゃなく、産地全体のクオリティを上げることで、世界に認められるワイン造りをしていこうという姿勢は、なかなか真似できることではないですね。
しかし、バランスのいいワインはできるようになったものの、その後も生産者の多大な努力をよそに、「品種の個性」や「産地の個性」、「オリジナリティ」を語れる甲州ワインはなかなか造ることができませんでした。
その真の魅力が姿を現しはじめたのは、それから約20年後。 2000年代に入ってからです。
ついに甲州ワインのポテンシャルが引き出されたんですね。
はい。 奈良時代に栽培がはじまって以来*、甲州ブドウの中に1300年間隠れていた香りが発見されたんです。 それが、『甲州 きいろ香』に代表されるグレープフルーツのような柑橘系の香りです。(*718年行基説に基づく)
橙(だいだい)のような和柑橘の香りもしますよね。 『甲州 きいろ香』大好きです。
“香りの発見”が2003年のことで、2004年ヴィンテージを2005年にリリースしました。さらに、通常の甲州ブドウの適熟期より2~3週間早く摘むと、その香りが最大になることもわかりました。
また、それと相前後して、それまでネガティブに捉えていた甲州ブドウの果皮に含まれる独特の苦みや渋みをポジティブに捉え、あえて果皮の色や成分を抽出し、これまでにない個性を持った『甲州 グリ・ド・グリ』を完成させました。
本当に、『甲州 きいろ香』にしても、『甲州 グリ・ド・グリ』にしても、同じブドウ品種から造られているとは思えないほど際立った個性がありますよね。 こうしたワインが誕生したことで、日本の甲州ワインが世界に認められるようになったんですね。
もちろんそれだけではありません。 実は甲州ワインのポテンシャルの発掘と並行して、「シャトー・メルシャン」として世界を目指し、欧州系ブドウ品種の栽培にも力を入れていたんです。 山梨県でいえば、城の平(じょうのひら)のカベルネ・ソーヴィニヨン、長野県では桔梗ヶ原のメルロー、北信のシャルドネ、福島県新鶴のシャルドネ、秋田県大森のリースリングなどがそうです。
そのなかで、1989年リュブリアーナ国際ワインコンクールで『シャトー・メルシャン信州桔梗ヶ原メルロー1985年』が大金賞を取ることができた。 そこで日本ワインに対する国際的な評価が高まり、現在、甲州という日本固有の品種にも関心が集まるようになったというわけです。
なるほど~。 欧州系品種によるワインが評価されて、それから日本固有品種の発展も進んでいったんですね。
そうなんです。 これが偶然ながら、海外の流れも日本と同じだったんですよ。
たとえば、アメリカ・カリフォルニアでも、ロバート・モンダヴィなどを筆頭に、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった世界品種と呼ばれるワインが成功して、次に自国独自の欧州系品種に力を入れ出しました。
わかった! 「ジンファンデル」ですね。
正解。 他にも、チリなら「カルメネール」、オーストラリアなら「シラーズ」、アルゼンチンなら「マルベック」などが、各国が独自に力を入れる欧州系品種ですが、やはりカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネで成功した後で、世界的に有名になっています。 日本の甲州も、今年、国際登録を果たしました。*(*「葡萄・ワイン国際機構(OIV、本部パリ)」に品種登録)
そうなんですね。 世界的に食のライト化であったり、和食が注目されたりするなかで、甲州の香り高く繊細で上品な味わいは、これからどんどん世界中で受け入れられるようになるんじゃないでしょうか。
僕もそう思います。 ワインのグローバルスタンダードも「濃くて力強いワイン」から、「繊細で上品なワイン」へと移行しつつあります。 日本人の繊細な味覚に合わせた甲州ワインが注目を集め出したのには、そういった背景もあると思いますね。
日本のワインでしか表現できない個性が認められるって、やっぱりすごいことですね。 本当に自信を持っておすすめしたいです!