さて、それぞれ特長を持った3本の甲州ワインのテイスティングが終わったところで、いよいよ料理と合わせてみたいと思います。
まずは海の幸、白身の生魚をカルパッチョとお刺身で食べ比べてみましょう。用意したのは、「甲州きいろ香」と、ボルドーの名門ドゥルト社の「ヌメロ・アン」(フランス語で “ナンバー1”の意)です。「ヌメロ・アン」の品種はソーヴィニヨン・ブランですが、「甲州きいろ香」と同じく、柑橘系の香りが際立つフランスワインということで、比較として用意しました。早速お刺身を、スダチを搾って、わさび醤油でいただいてみましょう。そして、「甲州きいろ香」と合わせてみてください。
この組み合わせ、すごくいいです! お刺身の淡白な味わいを邪魔しないというか、白身魚の甘みやうまみをワインが引き出してくれるようです。それに、魚の持つ脂っぽさもいい感じで広げてくれるというか。普通の白ワインだと、魚の生臭さが舌に残って後味がよくないんですが、「甲州きいろ香」は、それがまったくないです。
お刺身に合うワインってなかなかないと思っていたけど、おだやかな酸味のおかげでお刺身が本当においしくいただけます。それに、お醤油との相性もいいですね。こういう組み合わせを知ると、本当にワインってすごいなと思う。
もえちゃんのおっしゃる通り、おだやかな刺身の味に、日本生まれのおだやかなワインが合うんですね。適度で優しい酸味、和柑橘のおだやかな香り、甲州特有のほんのりした渋み、これらが繊細な和食によく合います。
そう聞くと、なるほど納得です。
では次に、「ヌメロ・アン」と白身魚のカルパッチョを合わせてみましょう。このワイン、先ほどのボルドー大学の富永先生の師匠に当たる、ドゥニ・デュブルデュー教授が開発に携わったワインなんですが、さすが香りの専門家、「ヌメロ・アン」にもびっくりするほどすばらしいグレープフルーツの香りがあります。加えて、カルパッチョはフルーティな香りのものと合うのですが・・・相性はどうでしょう?
うん、これもいいですね。オリーブオイルに負けないだけの香りと、バランスのとれた酸味があって、ガーリックや魚の塩分を引き立たせてくれます。それに、魚の身の繊維からうまみが出てくるような・・・はあ~、一口がとても豊かなものになりますね。 カルパッチョだけだと、ちょっとオリーブオイルの味が強く感じられたんですが、飲み合わせるとしっかりその味を包み込んで、なおかつお魚のおいしさを出してくれます。
本当だ、めちゃくちゃ合いますね(笑)。
これって、野菜とかサラダにも合いますか?
絶対合います。これは2本ともに共通していえることですが、両者とも香りが高いので、青臭い野菜、たとえばトマトとかセロリ、レタス、キュウリなどとも相性抜群です。
あ、でも、カルパッチョと甲州の場合は、もっとレモンを搾るとか、お醤油をかけてみる方がいいかもしれない。
白だからといって、必ずしも合うわけじゃないんですね。家でやるときは、いろいろ工夫してみます。
では、次に鯛飯と、味の軽いものから「甲州きいろ香」「ヌメロ・アン」それから「甲州グリ・ド・グリ」を合わせてみましょう。
あ~、鯛飯のいい香り! だしの香りが立ち昇ってます。先生もすごい笑顔(笑)。
さて、どれが合うかな? 僕は「甲州グリ・ド・グリ」だと思うけど、まあ、軽い方からいきましょう。
私は「ヌメロ・アン」が合う気がします。「甲州きいろ香」だと、少しシャープさが立ってしまうような気がするんですが、どうですか?
たしかに、「甲州きいろ香」はシャープすぎるかな。じゃあ、本命の「甲州グリ・ド・グリ」をいってみましょう。
香り的には断然こっちですね。鯛飯の甘い香りからいって、ワインの香りも甘みが突出していた方がいいように思います。もう一口食べたくなる、あとを引くのも「甲州グリ・ド・グリ」です。香りの割に味わいがまろやかだから、余計に合うのかも。これにもうひとアクセント、山椒や木の芽が入ったら、もう最高! 反対に、「ヌメロ・アン」だと香りが強すぎて、ちょっと気になります。
うん、やっぱり「甲州グリ・ド・グリ」が一番合うようですね。
じゃあ、鯛飯には「甲州グリ・ド・グリ」で決定!(笑) ワインと和食、とてもリッチなご飯になりますね。
和食の持っているやさしい味わいと、甲州のおだやかな酸味や香りがマッチするんですね。もえちゃんも先ほどから“バランス”という言葉を使っていますが、主張しすぎず、料理との味わいのバランスを生み出す甲州は、何より調和を重んじる日本人にしっくりくるワインだと思います。
そうですね、素材の味を大切にする和食のよさとケンカすることなく、しかも合わせることで和食のおいしさをより引き出すところが、また日本的な感じがしますね。
ところで日本的といえば、お正月につきもののおせちと甲州の相性はどうなんでしょう?
もちろん合います。今回のワインでいえば、一番のおすすめは「甲州グリ・ド・グリ」ですね。栗きんとんや黒豆の甘さにも合うし、昆布巻きや田作り(ごまめ)とも合いますよ。でも、それぞれの素材に合わせて調味料などの味付けもいろいろトライしてみると、さらにマリアージュの世界が広がると思います。
この間、お料理教室で簡単おせちを習ったばかりなので、早速試してみます! それにしても、日本人として、日本のワインを愛せるってすばらしいことですよね。今日はこのまま、ほろ酔いアンバサダーになってしまいたい(笑)。
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講師 舟木 茂
(ふなき しげる)
メルシャン(株) ワイン営業本部 企画部 エデュケーショングループ長

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