世界の赤ワインを飲み比べ!ブドウ品種に合わせてグラスを変えるとワインが変わる?!
専用グラスでワインの香りに変化が・・・グラステイスティングに挑戦!
それでは4種類の赤ワインのテイスティングをがんばってはじめましょう。まずは、フランスを代表する赤ワイン2種類です。フランス・ブルゴーニュ地方を代表するピノ・ノワールと、同じくフランス・ボルドー地方を代表するカベルネ・ソーヴィニヨンです。今回は、いつものテイスティンググラスではなく、フレンチレストランでソムリエさんがよく使う、赤ワイン専用のグラスを使ってテイスティングしたいと思います。
かなり大ぶりなグラスですね。ひとつは口が広くて、一般的なワイングラスをそのまま大きくしたような形ですが、もうひとつは真ん中が膨らんで口が小さく、包み込むような形をしていますね。でも、両方ともとてもきれい。
そうですね。卵の上をカットしたような形、やや寸胴で背が高い方が「ボルドー用グラス」。そして、口径がボルドー用より少し小さく、すぼまった方が「ブルゴーニュ用グラス」です。他にもシラー専用、ジンファンデル専用、テンプラニーリョ専用など、ブドウの品種ごとにさまざまなワイン専用グラスがあります。大雑把に言って、ボルドー用とブルゴーニュ用、この2つのグラスを持っていれば、だいたいどの赤ワインでもおいしく飲むことができますよ。
さて、なぜこの形状なのかという説明はさておき、今日使うグラスは、世界中のワイン愛好家が絶賛するオーストリアの名門グラスメーカー、リーデル社のものです。リーデル社は、オーストリアの偉大な作曲家、モーツアルトが生まれた年と同じ1756年創業の老舗なんですね。
1756年ということは、もう250年以上! 長い歴史があるんですね。
はい。でも、すごいのは歴史だけではないんです。今は10代目の当主ですが、今から50年ほど前の9代目のときにつくられたグラスが、ブルゴーニュ地方のワイン生産者たちに大絶賛を浴びたんです。ところが、同じグラスをボルドー地方へ持って行くと、今度はボルドーワイン本来の味わいの特長が出ないと不評を買ってしまった。つまり、グラスの形状によってワインの個性が生かされるということがわかったんです。
そこで、リーデル社がどうしたかというと、世界中のワイン生産者たちと納得いくまで試作を繰り返し、それぞれのワインにとって最適な形状を探し当てるというプロセスを経て、今では何と140種類以上のグラスをつくってしまったんですよ。
その上、このクリスタルグラスは、ワインの色合いを引き立たせる透明感はもちろん、顕微鏡で見ると、表面がちょっとザラザラしているんですが、このザラザラにワインがしっかりとしがみついて、ワインの涙がよく見えるように、香りがより立つようにできているんです。

(左)ロバート・モンダヴィ
プライベート・セレクション
カベルネ・ソーヴィニヨン 
(右)アルベール・ビショー
ブルゴーニュ・ピノ・ノワール 
それを聞くと、ワイン愛好家にリーデルファンが多いのもうなずけますね。同じ一杯のワインでも、楽しみ方が何倍にも広がりそう!
では、ピノ・ノワールからテイスティングしてみましょう。ブルゴーニュ地方の銘醸ドメーヌ「アルベール・ビショー」の2006年です。いつものように、色、香りからはじめましょう。
粘性があって、透き通るようなルビー色で、輝きがあります。香りは・・・、ラズベリーのような赤い果実の香りを感じますね。
そう。ピノ・ノワールの特長が一番よくわかるのが、このルビー色。ライトの下で指の上にグラスをかざすと、まるでルビーの指輪のように見えます(笑)。ブルゴーニュ地方はパリから少し下がったところですから、フランスでいうと北の方、冷涼な地域ということになります。
つまり、ブドウの果皮の色が薄くて、酸味が強いということですね。
そうです。すっきりとした酸味を感じますね。でも、これで終わりではありません。これからがグラステイスティングの本番。シートにジョーカーと書いてある小さいグラスに、このワインをすべて注いでください。そして香りを嗅いでみると、どうですか?
・・・あれ? ほとんど香りがしない。どうしてですか?
この小さいグラスは、カジュアルなレストランなどで使用されているソーダガラス製のものですが、残念ながら、このタイプのグラスは香りが集まりにくく、どのワインも単一の香りになりやすいんです。ジョーカーと書いたのは、このグラスが悪いわけではないけれど、大きさや形状、素材によって、香りが立たないからなんですね。
なるほど、グラスの重要性は、ここにあったんですね。比べてみると納得です。
では、いったん元のグラスに戻しましょう。戻してみると、同じワインとは思えないほど、ふわっとした甘酸っぱい香りが出てきますね。ピノ・ノワールの特長であるベリー系のラズベリー、フランボワーズといった香りですね。
本当。グラスの真ん中が膨らんでいて、先がすぼまっているのも、鼻先に香りを集めるために考え抜かれた形なんだなということがわかってきますね。
では続いてカベルネ・ソーヴィニヨンをボルドー用グラスで試してみましょう。カリフォルニアにある「ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション」2007年です。
色は紫がかった濃い赤で、輝きがあります。香りはバニラっぽい甘さを感じます。
本当にきれいなガーネット色ですね。先ほどのルビー色に対して、このカベルネ・ソーヴィニヨンは紫がかったガーネットのような色合いが特長なんです。ここで大事なポイントは、若いワインほど赤の中に紫が多く入っていることです。それが年代を経ていくにつれてオレンジがかって、最後はレンガ色になるんです。
何だか葉っぱの一生と似ていますね。青々としていた葉が、だんだん紅葉して、最後は茶色になって土に返って。
そうですね。こうしたワインの特徴も少しずつ覚えておくといいですよ。さあ、ではこのワインもさっきと同じように、ジョーカーに移し替えてみてください。空いたグラスを嗅ぐと、まだしっかり香りが残っていますが、ジョーカーの方はどうでしょう?
やっぱり香りがほとんどないですね。カベルネ・ソーヴィニヨンのかぐわしくて奥行きのある香りが全然なくて、ストレートにドシンとくる感じです。
では、このボルドー用グラスに、今度はピノ・ノワールを入れてみましょう。
ちょっと実験っぽくなってきましたね(笑)。
少しスワリング(グラスを回すこと)してみると、ブルゴーニュ用グラスで感じた果実味ややわらかい酸味が分散して、香りが薄まったような気がしませんか? 先ほどの輪郭のはっきりした香りが少しぼけたような。
う~ん、今日は難しいですね。たしかに変化は感じるんですが、私は、まろやかな酸味のある果実の香りが、ジョーカーで感じたようなツンとくる酸味の強さに変わった気がします。ただ、バランスがよくないというか、しっくりこない感じはしますね。
なるほど。そういう感じ方があってもいいと思いますよ。では反対に、ブルゴーニュ用グラスにカベルネ・ソーヴィニヨンを入れてみましょう。これで完全に、グラスとワインが入れ替わりました。
僕は、最初のボルドー用グラスのときより、心地いい香りの広がりがなくなったような気がしますが、もえちゃんはいかがですか?
そうですね。バニラっぽい香りが奥に引っ込んでしまった代わりに酸味が出しゃばって、最初に感じた印象が変わったような気がします。
それはいい表現ですね。つまり、本来の香りの特長が生かされていない。それこそが、グラステイスティングの目的「=ひとつのワインを違ったグラスで飲み比べることで、ワインの香り、味わいが驚くほど変わることを鼻腔と舌で実感してもらうこと」なんですね。
これは、ワインの特長を知る上でも勉強になりますね。でも、やっぱり難しい~~。
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